教科書に関する質問事例を紹介します。

小学校「新編 新しい算数」
Q1 教科書ではうさぎを数える際の助数詞として「匹(ひき)」が使われていますが,うさぎの助数詞は「羽(わ)」が正しいのではないですか。

 日本放送出版協会発行の『NHK放送のことばハンドブック』,及び,小学館発行の『数え方の辞典』によりますと,いずれにおいても,「うさぎを数える際の助数詞は,慣習的に「羽(わ)」を用いることもあるが,動物として数える際は「匹(ひき)」を用いることが適当である」とされています。さらに,前述の『NHK放送のことばハンドブック』によりますと,動物の数え方の基準として,小動物には「匹(ひき)」を,鳥類には「羽(わ)」を用いることとされています。
 私どもでは,上記の原則に沿って,教科書で使用する助数詞について検討しました。まず,教科書におけるうさぎの助数詞としては,「羽(わ)」または「匹(ひき)」を用いることが適切であるといえます。次に,上記の基準に照らして考えますと,「羽(わ)」は鳥類に用いる助数詞ですので,鳥類ではないうさぎを「羽(わ)」で数えることは助数詞の例外的な使い方となります。教科書で,うさぎを数える際に「羽(わ)」という助数詞を取り入れますと,児童は,算数の問題に取り組みながら,同時に例外的な助数詞の使用にも配慮することとなります。児童の発達段階によっては,うさぎを「羽(わ)」で数えることにより負担が大きくなり,学習の際に混乱を招くことも考えられます。
 これらのことを踏まえまして,教科書では,児童の混乱を避けるため,うさぎの助数詞は「羽(わ)」ではなく「匹(ひき)」を用いています。

質問事項一覧へ戻る
Q2 1年の100までの数表で,「1」からではなく,「0」から始まっているのはなぜですか。

 1年の100までの数表で「0」から始めている理由は大きく分けて2つあります。
 まず,十進位取り記数法の理解の定着をねらっていることが挙げられます。この単元以前の単元では,数えることを中心に扱っているため,「10までの数」「20までの数」と,数範囲を10ごとに区切ってきました。しかし,この単元では,初めて位取りの考えを導入します。目標として「位取り記数法の原理を理解し,そのよさに気づくこと」を掲げており,「一のくらい」「十のくらい」という用語を学習します。「0」から始まる数表では,「20,21,22,・・・,29」と十の位の数字が同じ数が横一列に10個並んでおり,例えば20台の数が10集まると次は十の位の数が1増えた30台の数になる,ということが見やすくなっています。すなわち,「9と10の間,19と20の間,29と30の間,・・・」でそれぞれ改行することで,十の位が同じ数である10個の数のまとまりを意識させることをねらいとしています。
 また,数表を数直線と関連づけて扱うことも意図しています。教科書でも数直線を示していますが,数直線では最初の目盛り(原点)は「0」になっています。数表でも起点としての「0」を示すことで,数直線と対応させやすくなると考えます。数表を数直線と関連づけて扱うことで,数表で示した100までの数を集合数としてだけでなく,順序数としてもとらえられるようにするというねらいがあります。

質問事項一覧へ戻る
Q3 九九の唱え方は教科書に掲載されている以外にも,例えば「三六(さんろく)18」「四八(しわ)32」など様々な唱え方がありますが,どの唱え方が正しいのですか。

 九九の唱え方には様々なものがあります。私どもでは,教科書を編集するにあたり,算数をご研究されている先生方を中心に広く情報を集め,最も一般的であると判断した唱え方を教科書に掲載しています。しかしながら,先述しました通り九九の唱え方には様々なものがあり,正しい唱え方というものは定められません。九九を唱える目的は正しい積を得ることですので,先生方や児童に分かりやすい唱え方でご指導いただくことが適切であると考えます。

 なお,かつては各地域の唱え方を尊重し,教科書には九九に振り仮名を付けていませんでしたが,一斉唱和など学級内で統一する必要性を考慮して,現在のような振り仮名を付けるようになりました。
質問事項一覧へ戻る
Q4 あまりのあるわり算の答えが「14÷3=4あまり2」と書かれていますが,「14÷3=4・・・2」のように書いてもよいのですか。

 結論から申し上げますと,学級内などでのルールとしてならば,「あまり」を「・・・」で表記しても差し支えないと考えます。
 教科書で「14÷3=4・・・2」という表記を扱っていないのは,「・・・」は数学記号ではなく,普遍的に認められる表記といえないということが理由です。
 また,「14÷3=4・・・2」のように表記しますと,児童が等号の意味を誤解することにつながりやすいと考えられます。等号は左辺と右辺が等しいときに用いる記号ですが,児童は等号の意味を「答えを出すもの」や「式と式をつなぐもの」程度に認識していることも多いようです。そのような誤った(もしくは不十分な)認識を持ったまま「14÷3=4・・・2」のように表記しますと,「・・・」も等号と同じような記号であるととらえたり,「・・・」を式の一部ととらえたりする誤解が生じやすくなるようです。
 しかしながら,「あまり」を「・・・」と表記することは,児童にとって書きやすく,負担の軽減になります。上記のことをきちんと確認すれば,「あまり」を「・・・」と表記することは学習上大きな問題はないと考えます。

質問事項一覧へ戻る
Q5 4年上巻9ページ「もの知りコーナー」の兆よりも大きい数で,「垓」の次が「漢字(し)」となっています。書籍によっては,「じょ(のぎへんに予)」(コンピュータでは表示できませんので,以下,このように記します)となっているものもあります。どちらが正しいのですか。

  ご指摘のように,確かに一部の辞書やドリル等には,「じょ(のぎへんに予)」として掲載されているものがあります。教科書では,次の出典の記述内容を根拠として「漢字」を掲載しています。
 「漢字」を掲載している根拠となる出典は,いくつかありますが,下記の3点をご紹介させていただきます。
(1)岩波文庫「塵劫記」(1977,岩波書店)
(2)現代語「塵劫記」(2000,和算研究所)
(3)大漢和辞典〔巻八〕(大修館書店)

(1)岩波文庫「塵劫記」の14ページには,次のように記されています。
 『(三)「じょ(のぎへんに予)」は中国の数学書にはすべて「のぎへんに市」(これもコンピュータでは表示できません)または「漢字」とある。「のぎへんに市」・「漢字」は同字。「じょ(のぎへんに予)」は写し誤りであろう。げんに「塵劫記」漢文序には「のぎへんに市」とある。』

(2)現代語「塵劫記」の39ページの注意書きには,次のように記されています。
『「じょ(のぎへんに予)」は正しくは「漢字」である。寛永4年版序文では「のぎへんに市」が使われているが,吉田は禾(のぎへん)の「じょ(のぎへんに予)」を用いた。吉田以外にそれまで「じょ(のぎへんに予)」を使った人はいない。』

(3)大漢和辞典〔巻八〕には,「漢字」の解説に,数の単位として,垓の次にくる単位であることが記されています。また,この辞典には,「じょ(のぎへんに予)」の記載がありません。


  なお,一般によく知られている「塵劫記」そのものには,「じょ(のぎへんに予)」が用いられていますので,これを根拠として「じょ(のぎへんに予)」を用いている書物もあります。したがいまして,このような状況からしましても,どちらの漢字が正しいかということよりも,どちらの漢字も認められて差し支えないと考えます。
質問事項一覧へ戻る
Q6 4上p.63 の問題4「1.2+2.8」の筆算において,答え4.0の「0」のみを斜線で消し,小数点は残したままにしている理由を教えてください。

 結論から申し上げますと,筆算について,正式な基準や方法が定められているわけではなく,児童の実態などに応じて柔軟にご対応いただいて差し支えないと考えています。要は,「答えは4である」ととらえることができればよいのであって,例えば,「斜線を用いて0を消去していないから誤りである」とか,「小数点を斜線で消去したから誤りである」などといったことは全く意図していません。
  以下,新しい算数4上p.63の問題4の小数の加法の筆算(p.64の問題6の減法の筆算についても同様)で,小数点以下の計算結果が「0」になる場合の,斜線を用いた消去の教科書上の表現の意図について説明します。
 まず,末位の「0」について斜線で消去していることについて述べます。
  筆算の手続きに従って計算すると,結果は4.0となります。ここでは,有効数字については考えませんので,4.0と4は同義であり,児童にとっても,筆算から得られた「4.0」から,「答えは4」とするのが自然です。「0」をそのまま残した場合,「小数の計算において,小数点以下が『0』になるときには,4.0と答えなければならない」との誤解が生じる可能性,また,小数点があることを忘れ,「答えは40」という誤答が生じる可能性に配慮し,0を斜線で消去することとしました。
 次に,小数点について,斜線で消去せず,そのままにしていることについて説明します。
小数点を斜線で消去することのメリットについては,例えば,

(1)
答えは4であることから「0」を斜線で消したのだから,小数点も斜線で消すことが児童にとっては自然であるということ
(2)
「答え 4.」のような誤答が生じる可能性に配慮すること
などのことが考えられます。しかし,0を斜線で消去し,答えは4であることをとらえたならば, (2)のような誤答が生じる可能性は低いと考えます。また,(1)については,誤答や誤解が生じるというレベルのことではないことから,結果として,小数点を斜線で消去する必要性はあまり感じられないと判断しました。

 以上のように,筆算には正式な基準や方法が定められているわけではありません。教科書紙面は,上述のような考え方に基づいて扱っていますが,斜線を用いた消去の表現について児童から疑問が出された場合には,その内容に応じて柔軟に対応していただくのがよいと考えます。
質問事項一覧へ戻る
Q7 「わり算の筆算(2)」の後に「概数」を配置している意図を教えてください。

大きくは,2つの理由があります。

(1)子どもの数感覚を大切にしたいこと。また,わり算の筆算の学習を通して,さらに数感覚を伸ばしたいこと
 計算単元においては計算のしかたを確実に理解することはもとより,計算を通して子どもの数感覚をいっそう伸ばすこともねらいとすべきであると考えます。わり算の筆算の学習に際しては,先に四捨五入を指導しておき,四捨五入して仮商を立てる方が子どもにとって負担が少なく,また,便利な面もあります。しかし,その反面,四捨五入を前面に出しすぎますと,機械的な数処理に陥りがちといった面も持ち合わせていると考えます。すなわち,計算する前に答えの見積もりをしたり,数の特徴を生かした計算方法を考えたりというような,本来行うべき「数をよく見る」という活動が疎かになってしまうということです。もちろん,筆算の学習ですから,アルゴリズムに則って機械的に処理できることがよさの1つであることは承知しておりますが,仮商を立てる場面はアルゴリズムに入る前であり,そこではできるだけ数感覚を生かすことが望ましいと考えます。
 そして,「わり算の筆算(2)」においては,除数の25を子どものもつ数感覚により20とみたり30とみたりしながら計算するなど,子どもの数感覚を活かしながら学習を進めていく展開を採用しています。

(2)「概数」先習の単元配列の弊害が生じたこと
 以前に,「新しい算数」においても「概数」→「わり算の筆算(2)」という配列を試みたことがあります。その際の意図は,「仮商を立てる際の方法の1つとして四捨五入の活用も考えられる」というものでした。しかし,結果として「四捨五入の理解が不十分な子どもは『わり算の筆算(2)』の学習がますます困難になる」というご指摘や,「四捨五入を学習した後では,25を20とみることに戸惑う子どもも少なくない」というご報告も多数いただきました。また,先に四捨五入を扱った後では「数感覚を自由に活用して仮商を立てる学習が成立しづらい」というご指摘をいただいたことも付け加えておきます。
 以上のような理由から,「わり算の筆算(2)」の後に「概数」を配置しています。

 なお,「新しい算数」では,「概数」を先に扱ったほうがよいとお考えの先生方が単元配列を入れ替えてご指導されることも考慮し,「わり算の筆算(2)」と「概数」を近づけた単元配列にしています。
質問事項一覧へ戻る
Q8 「平行四辺形と三角形の面積」で,平行四辺形から導入する理由を教えてください。

大きくは,3つの理由があります。

(1)平行四辺形は既習の長方形に等積変形しやすいこと
 三角形の場合,直角三角形を除き,面積を求めるには,頂点からの垂線によって2つの直角三角形に分割して,それぞれの直角三角形の面積を求める手順を踏むことになります。これらの手続きは,平行四辺形の場合に比べ,操作が煩雑である上,式変形も単純ではありません。

(2)三角形の面積公式が導きやすいこと
 (1)と少し重複しますが,三角形から入りますと平行四辺形の面積公式を導く際も,手続きが煩雑になることが考えられます。三角形の面積公式を利用する考えでは,三角形の面積(底辺×高さ÷2)を再度2倍することになり,低位の子どもには2で割ったものを2倍することは混乱の要因にもなりかねません。平行四辺形から入りますと,三角形の面積=平行四辺形の面積÷2であることから,三角形の面積公式が導きやすいと考えます。

(3)多様な考えが出やすく,子ども自身が既習を活用しやすいこと
 このことがいちばん大きい理由と考えます。平行四辺形を先行させる順序ですと,平行四辺形の後に,三角形やその他の図形の面積の求め方を学習することになりますが,三角形や台形などで既習の図形に帰着して考える際,いろいろな選択肢が生まれます。また,その方法も多様です。

  一方,三角形から入る場合には,常に三角形に戻って考えればよいという考え方が基本になります。これは三角形から入ることの長所とも言えます。確かに基本図形はすべて三角形に分割することができますので,三角形を基本に考えて図形の面積を求められるという数学的な魅力があります。
 また,この単元ではただ図形の面積の求め方を学習するだけでよいのかどうかを考えたとき,この単元は,算数における学び方を学ぶ場面として,既習を用いて多様な考えによって解決できること,一見異なる多様な考えが最終的に1つの式にまとめ表されることなど,算数のよさを堪能できる最適な内容と位置づけることもできると考えます。   

 平行四辺形と三角形,どちらの求積から導入する場合でも,既習を活かすこと,児童の多様な考えを取り上げること,解決方法の検討を通して1つの式(公式)にまとめられることなどおさえて学習を進めていただくことが肝要かと考えます。
質問事項一覧へ戻る
Q9
例えば,教科書2年上巻19ページの「37+28」の筆算では,繰り上がった「1」は,
  図
と記述されています。このように,補助数字を書く位置は,被加数の上(上記の例で「3」の上)と決まっているのですか。
教科書3年下巻18ページの「16×4」の筆算では,
  図
と記述されています。この場合,補助数字を書く位置は,答えの十の位の上と決まっているのですか。横棒の上に書いてはいけないのですか。

  補助数字の書き方には様々な方法がありますが,正式なものはありません。したがいまして,教科書では,一般的に通用しているもの,計算の誤りが少ないもの,以後の学習においても適用できるものなどを判断基準とし,教科書のような表記にしました。また,以下の点なども配慮しました。

(1)たし算の筆算

  • 2年生の発達段階を考えると,できるだけ書きやすく,シンプルな方法が望ましい。
  • 繰り上がりのあるたし算の誤答の代表的な原因に,繰り上がりを忘れることがある。そのため,まずは繰り上げた「1」の処理をし,その後,位同士の計算をする習慣をつけたほうがよい。

(2)かけ算の筆算
  • 教科書(3年下巻18ページ)では,「16×4のひっ算のしかた」の枠の左側に,部分積を2段に分けて書いた筆算の準形式を例示して「筆算のしくみ」を表しています。補助数字はこの準形式との橋渡し的な役割も果たしていると考えます。
  • 質問にあったような,補助数字を横棒の上に書くことも考えられます。しかし,3年の第14単元「かけ算のひっ算(2)」で乗数が2位数以上になると,筆算形式では部分積が複数の段になるため,横棒の上に補助数字を書くことができなくなります。

 なお,教科書に掲載するにあたって,補助数字の書き方自体も「厳格に指導すべき内容」として受け止めてしまうなどの誤解を避ける必要があります。補助数字の位置づけとして,あくまで,計算結果を正確に求めるための便法の1つとして取り上げていることを明確にするために,枠の外に置き,吹き出しで紹介するなど,抑えた表現方法で記しました。このように,補助数字は必ず書かなければならないものではなく,学級の実態や先生方の教材観に基づいて,柔軟に対応していただくべき内容であると考えています。
質問事項一覧へ戻る
Q10

○教科書では演算記号や等号,分数の書き順が示してありますが,それには何か基準があるのですか。また,それは必ず守らなければならないものですか。

○わり算の筆算では,被除数・除数・筆算の記号はどのような順序で書くのが正しいのですか。
 以前は「確かでないことは教科書には載せない」との立場から,演算記号や分数の筆順など,明確な筆順が存在しないものについては教科書には載せておりませんでした。しかし,「児童に好きな筆順で書いてよいと指導すると,混乱が生じることもあるので,正式な筆順がないとしても,何らかの筆順を示して欲しい」との要望も多く,現在の教科書では,「+,−,×,÷」などの演算記号や等号,「%」の記号,分数などについても筆順を示すようにしました。また,わり算の筆算については,教科書ではなく,教師用指導書に筆順を掲載しています。
 以下に,「演算記号や等号,パーセント記号」「分数」「わり算の筆算」について,教科書または指導書で示している筆順について説明します。
 ただし,以下に示されている筆順は,あくまで筆順がわからないことによる児童の混乱を防ぐためのものであり,単なる一例にすぎません。必ずこの通りに書かねばならないというものでも,そのように指導しなくてはならないというものでもありません。

(1)演算記号(+,−,×,÷)や等号(=),パーセント記号(%)について
 これらの記号について明確な筆順は存在しないようです。また,これらの記号の由来(※例「%」)から,筆順を判断する手がかりが得られないかと考え,調べましたが,やはり確たる根拠は見当たりませんでした。
  そこで,筆順を掲載するにあたり,編集部では「一般的によく行われる書き方であること」と「小学生にとって書きやすく,自然に受け入れやすい筆順であること」の2点を考慮し,現在掲載している筆順を採用いたしました。

※註「%記号の由来」
 「per cent」という言葉は15世紀にヨーロッパの商業の中心であったイタリアで多く用いられるようになり,当初は「p cent」 などと表記されていました。その後,「p」が省略され,「cent」が「Cの真上に小さい○を付した記号」に変わるなど徐々に変化を続けた結果,最終的に現在の「%」になったとのことです。
-
 もともとイタリアではprimo(第1),secundo(第2)・・・などの代わりに,1や2などの数字の真上に小さい○を付した記号で表す習慣がありました。そのため「100について1」という共通単位を表す際に,cent(100)の頭文字をとって「Cの真上に小さい○を付した記号」が使われるようになったようです。
(参考文献)
「数字と数学記号の歴史:大矢真一,片野善一郎 著」(1978,裳書房)
「算数・数学授業を楽しくする数学史の話:上垣渉 著」(1990,明治図書)
(2)分数について
 分数の筆順の掲載にあたり,編集部では,「前後の数や記号などとのバランスを崩さずに書けること」に主眼を置き,下記[1]〜[3]の3案について検討いたしました。
-
 [1]の書き方は「b分のa」という分数の読みに対応したものであり,こちらの方が良いのではないか,とも考えました。しかし,分数表記に不慣れな段階で[1]や[2]の筆順で書くと,これまでの数や式の表現の経験から,下のように前後の数や記号と同じ高さに,同じ大きさで分母や分子を書いてしまう恐れがあります。
-
 これらの表記は,前後の数や記号とのバランスが悪く読みづらいことに加え,「(2+3)が分母なのか」,「(2+2)が分子なのか」といった混乱を生じさせることにもつながります。
 以上のことから,中の線を最初に書く[3]の書き順であれば,[1]や[2]と比べて前後の数や記号などとのバランスを考えやすく,かつ誤解も生じにくいと考え,[3]の書き順を示すことにしました。

(3)わり算の筆算について
 わり算の筆算については,「筆順に関して児童が戸惑うことが少ない」という意見が多く,現在弊社の教科書には筆順は載せていません。しかし,「指導上の工夫として児童に対する目安が欲しい」という要望もありますので,指導書では下記の筆順を紹介しています。
-
 これは,わり算を声に出して読んだときの順番に対応させようという指導が背景にあります。つまり,上記の筆算を声に出して読むと「52わる4は」となりますが,52と4の間の「)」を「わる」に,52の上の「 ――― 」を「は」に対応させることで,式を読む順番通りに筆算が書けるように,との配慮からです。
 繰り返しになりますが,上記に紹介いたしました筆順のいずれも,正式なルールはありませんので,学級や児童の実態に応じて柔軟な取り扱いをすることが肝要かと考えます。
質問事項一覧へ戻る
Q11 紙面上でヒントなどを教えてくれる宇宙人のようなキャラクターの名前を教えてください。
 「新しい算数」では児童へのヒントを与えたり,学習の方向性を示したりするキャラクターが随所に登場します。このキャラクターは,かなり長い間,教科書紙面上で親しんでいただいているものですが,名前は特につけていません。むしろ,算数の学習を進めていくにあたって,学級の中で名前をお決めいただいて,親近感を持ちながら学んでくださることを編集部としては希望しています。
 なお,紙面上では,赤・青・緑の3種類のキャラクターが登場いたしますが,これらの色の違いによる性格づけ,および性別のようなことは,まったく考えていません。単なる色合いのバランスによる使い分けです。
質問事項一覧へ戻る
Q12 5年上巻94ページの問題で,「四捨五入して,上から2けたのがい数で求めましょう」とありますが,「上から2けた」という表現はここが初出ではないでしょうか。4学年の「概数」の単元ではなく,5学年の「小数のわり算」の単元で扱っているのはなぜですか。
 ご指摘のように,「上から2けた」の表現はここが初出になります。平成13年度以前の教科書では,4学年の「概数」の単元で,概数にするための3つの表現(A「○の位を四捨五入する」,B「○の位までの概数にする」,C「上から○けたの概数にする」)を示していました。しかし,「3つの表現を一度に扱うと児童の負担が大き過ぎる」とのご指摘が多く,3つの表現の取り扱いについて検討しました。
 A,Bについては,いくつかの数を概数になおす場合や,加減計算に適用する場合などに用いられるため,4学年で扱わなければなりません。一方,Cの「上から○けた」の表現は有効数字の側面を持ち,一般的に乗除の場面で用いられます。しかし,4学年の「概数」の単元は,初めて概数を扱う箇所であり,概数が用いられる場面について知るなど概数の意味の理解が中心になります。そのため,概数を乗除計算に適用する場面を4学年で扱うことは避け,また実際に「上から○けた」にふさわしい有効な具体場面を用意することも大変困難です。したがって,仮にこの単元で「上から○けた」の表現を扱ったとしても,意味理解が伴わず,数の形式的な操作のみに終わってしまう恐れが生じてまいります。そこで,4学年で無理して扱うことよりも,むしろ,有効な具体場面をご用意できる,5年上巻の「小数のわり算」の単元において取り上げた方が意味の理解が深まるのではないかと考えました。これらのことを踏まえまして,「上から○けたの概数にする」という表現を5学年の「小数のわり算」の単元で扱うことにしました。
 なお,「上から○けた」という表現は,当該箇所以外にも6年上巻「がい数の計算」の単元においても扱っています。
質問事項一覧へ戻る
Q13 教科書では,「ひとり」という語の表記として,算用数字の「1人」が使われています。「ひとり」という読み方は,漢数字で「一人」と表記した場合にのみ認められているものなので,「1人」と書くのは間違いではないでしょうか。
 私どもの算数教科書では,算数の学習において数に着目させるという意図から,数字は原則として算用数字を用いて表記しています。また,助数詞については,発達段階に配慮しながら慎重に用いるようにしています。
 「人」という助数詞は,低学年では最も身近な日常場面で用いられ,「ひとり分はいくつ」「ひとりに何個ずつ分ける」などという算数の学習内容にも関わることが大変多く,紙面上では必要不可欠な語です。
 「人」という助数詞を使う場合に,「ひとり」「ふたり」を,漢数字を用いて「一人」「二人」と正しく表記すると,3以上の数値(「3人」「4人」など)と表記の不統一が生じることになります。また,「ひとり」「ふたり」と平仮名で表記すると,数に着目しにくくなり,算数の学習に支障が生じる恐れがあります。
 これらのことを踏まえまして,数に着目させるという算数科指導のねらいに基づき,また,表記の統一を図るために,算用数字を用いた「1人」「2人」という表記を採用しています。
 「1人」「2人」を「ひとり」「ふたり」と読むことは,正しくは認められていませんが,慣用的に広く用いられ通用している表現と認識しています。また,「1人」「2人」という表記に対して他の読み方をあてることもできませんので,「ひとり」「ふたり」と読むこととする,というのが私どもの考えです。
質問事項一覧へ戻る